伊藤 咲穂
大学2年生の2月に、富山県五箇山にある和紙工房で楮の繊維に触れたことが契機となり、和紙や日本画、自国の文化に深く興味を持つようになる。
五箇山の静かな雪景色のなかで、身も凍るような水に通された楮の繊維は、ただもう美しく、和紙に対して尊敬と懐かしい親しみを覚え、日本の古典にこそ自分の追い求める何かがあると感じ、その精神的な部分は、今の制作に大きく影響している。
研究の末、独自の漉き方でたどり着いた紙(手漉きする際に、金属の鉱物を混ぜた「錆和紙(さわびし)」)をはじめ、今後も楮や三椏、雁皮、金属の錆について研究し、制作を続けている。
今後のテーマは地元島根県の和紙や鉄の素材を扱うことである。
「錆びて行くこと」「朽ちて行くこと」「老いて行くこと」「土へ還っていくこと」それは決して否定的なことではない。
寧ろ自然であり、自然であることが美しい。
それは生きとし生けるものに与えられた原理である。
また、そのような感覚の原点は、幼少期に過ごした島根県の自然環境の、静けさの中で感じた自然への憧憬と畏怖の想いである。
移ろう日々の小さな出来事。
それは例えば、一分一秒の空の色、月の陰や高さ、風の匂い、街の音、本の中の一説や、人の言葉、雪の白さや太陽は丸い、ということの驚くべき不思議に気づき、大切にしていくことなのである。
1989年8月 島根県浜田市弥栄町 誕生
2005年 広島県 呉工業高等専門学校 建築学科入学
2010年 東京都 武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科 入学/2014年 卒業
2014年 東京都 Jinen’s Art Studio 所属
活動
2007年 五三会建築設計競技コンペティション 審査員特別賞
2008年 広島「OMNIBUS」展 呉工業高等専門学校
2009年 東京「立美祭」memento-mori 東京工芸大学賞 ギャラリー賞
2010年 僕とアナンモザイクアートコンペティション 佳作
2011年 「STARBUCKS×SAKURA」東京都 国分寺店内展示
2012年 「夜想曲第8番変二長調」 Ber nocturne内個展
2012年 「五美術大学交流展―結―」
2013年 「伊藤忠青山アートスクエア/五美術大学交流展」
2013年 「Relation A」グループ展示Jinen’s Art Studio
2013年 「interiorlifestile アッシュコンセプト」MAUブース
2013年 exhibition―錆紙漉き― シントン内個展
2014年1月 武蔵野美術大学 卒業制作展
2014年1月 青山スパイラルガーデン卒業制作学外展
2014年2月 六本木 ルベイン(le bain)グループ展
2014年6月 東京都東大和第五中学校 公開制作 「さびし」個展
2014年7月 「JOIN展」Jinen’s Art Studio 麻布十番ギャラリー
2014年8月 東京都東大和第五中学校「ムサビる」展示
2014年9月 「FAD FEAR」新宿アートコンプレックスセンター展示
2014年11月 神在月・石見の神紙(かみがみ)が舞う 石州和紙デザインコンペ 石州半紙技術者会賞
2014年11月 「共存展2」 檜・麹・紙・音 無名館より 新宿ノン・フィニートギャラリー
2014年11月 助手展2014 武蔵野美術大学助手研究発表 作品共同制作
2015年 3月 個展「静けさを行く」 新宿ノン・フィニートギャラリー
2015年 4月 咲穂庵 常設展 新宿ノン・フィニートギャラリー
2015年 5月 出張!相談家具屋WOODWORK CENTER「たいけん いちば」 DAIKANYAMA T-SITE GARDEN GALLERY
2015年 6月 「共存展3」 無名館主催 EARTH+GALLERY